2006年07月18日
『ブラッド・プライス―血の召喚』 タニア・ハフ著 和邇桃子翻訳
「インタヴュー・ウイズ・ヴァンパイア」と思いつつ読み進めていたら、「女神転生」でしたというオチ。……というのは、余りにも個人的な経験に基づきすぎる感想のようにも思いますが、仕方がない。
ヒューリック氏のディー判事シリーズ翻訳を手がける和邇桃子さんつながりで読んだ一冊です。
舞台がちょっと昔(といっても携帯電話の普及がまだでポケベル時代)の現代なので、なんとなく和邇さんにしては意外な話と思いました。中国がらみでないし、『アゴールニンズ』のようなクラシカルな香りがするものでもないし。
まあ、この第一印象は底の浅いものであると読み進めれば分かるのですが、なかなか読み進めるのが難しいものでしたよ。
そもそも現代物ということで、一人称的三人称で主人公のヴィッキー・ネルソンを筆頭に口語でぽんぽん行動し思考することすること。口語体の文章というのは翻訳というフィルターをかけるのが非常に難しいのです。
そのヴィッキー、元トロント警察殺人課刑事で、当時は女だてらの遣り手らしい直情的な性格とみえて、そのノリに当初ついていけませんでした。すごい怒りっぽいんだもん。彼女の現在の状況がまた、急な病による視力減退中で、転職したての私立探偵という、あんまり冷静とはいえない精神状態なのです。
そこに最初の殺人事件から絡んでくるのが、警察時代のパートナーのマイク・セルッチ。同僚なのやら恋人なのやらという微妙な関係で、口喧嘩ばっかりしているので内容が頭に入って来ないんですよ。
文章の主格となる人物も、時折ヴィッキー以外の人物(被害者とか、犯人とか)に移行しますが、みんな感情的に自己中心的な思考(欧米人的?と邪推したりも)で行動するものですから、ほんっとうに分かり難い!
バリー・ヒューガート氏の「鳥姫伝」シリーズも入り込むまで難しかったですけどねえ……
そんな状況を救ってくれるのが、もう一人の主人公ことヘンリー・フィッツロイ。
彼は作中で十分に語られる出自に加え、現在の職業は作家ということもあり、他の連中に比べると至極理解しやすい整った言葉を使ってくれます。
彼が出てくるまでは、タニア・ハフがそういう文体の持ち主なのかと恐々としてましたけど、これはたぶん演出なんだろうなあ。
ヘンリーは面白いキャラクターです。
ぶっちゃけ、彼が実はヴァンパイアなのですが、この部分は作品の比較的早い位置で明かされるので明かしても問題ないでしょう。
ヴァンパイアゆえ、若い容姿を保ったまま数百年の生を続けています。が、その彼の出自が歴史上に名を残す人物であるという深み。そこから産み出される彼の個性と、現代都市トロントで営むライフスタイルとのギャップがとても魅力的です。
小説家という設定も興味深い。
「他の職業にくらべて、小説家の仕事風景は絵にならない」と書いた人がいましたが、ヘンリーは結構仕事してます。それどころか、本文とは別書体で彼が執筆中の小説が封入されたりしているのが、枝葉ながら面白い効果です。で、またこの書いている小説ってのがねえ、 「ボディスひん剥き話」って(笑)
そして、この表現スタイルは小説の後半に違う物語りを語る手段に流用されていくのですが、狙っているのかそれとも深い意味はないのか不明ながら、楽しめました。
基本的な物語は、ヴァンパイアものというより、ヴァンパイアも関わるオカルト話というところでしょうか。
ヘンリーの出自と経験豊富な人生がシリーズに影響していくのは確実と思いつつ、以降の展開がどうなるのかは想像も付かないですね。
ヴィッキーとヘンリーの今後の関係も気になります。複数の意味で凸凹カップルだしなあ。身長も生活も性格も。
しかしながら、ヒューリック著作の全訳やポール・ドハティによる ロジャー・シャロット・シリーズの刊行と、和邇さんの関わる大きなお仕事が二つになってしまったので、こちらのシリーズは棚上げかなと思ってちょっと残念です。
それから、余談ながらamazon.co.jpにはレビューがひとつ付いています。
共感する部分も多いのですが、日本語としての成熟うんぬんについては如何なものかなあと思いました。
まあ、私は和邇さんのファンだとみられて当然なひいき発言と思われるでしょうが、『アゴールニンズ』でも触れたように、翻訳には素訳から超訳あるいは翻案までのレベルがあるわけなのですよ。
ぶっちゃけ、最初は読みにくいと感じていた和邇訳ですが……近頃いくつか読んだ「こなれた日本語にしちゃった邦訳外国語小説」はなんだかもの足りなく感じてしまうですよ。
この翻訳レベルというか、日本語こなし度って本の表紙に五段階ぐらいで表示しといてくれないかと昨今よく思います。
中国物で云うたら、平凡社系の駒田信二が2~3ぐらいで他の「中国怪奇物語」とかは4~5かな。
田中芳樹の「岳飛伝」は5なの? ちくまの「漢書」や「史記」は1とかでいいだろうか?
ま、中国物は漢文がある意味日本語ではあるので、「こなれてる・こなれてない」という言い方で表すのにちょっと語弊ありますねえ。
投稿者 冰児 : 23:13 | コメント (0) | トラックバック
2006年07月16日
8月の新刊情報
4日 金庸・岡崎由美ほか 『神雕剣侠3 襄陽城の攻防』(徳間文庫・徳間書店)
4日 羅貫中・立間祥介 『三国志演義3<改訂新版>』(徳間文庫・徳間書店)
上旬 足立喜六 『長安史蹟の研究』(鳥影社)
10日 岡本綺堂 『中国怪奇小説集 新装版』(光文社文庫・光文社)
10日 白井恵理子 『黒の李氷・夜話2』(ホーム社漫画文庫・集英社)
18日 原泰久 『キングダム2』(ヤングジャンプコミックス・集英社)
22日 陳舜臣・手塚治虫 『マンガ中国の歴史5 チンギス・ハンの世界帝国』(中公コミック文庫・中央公論新社)
22日 寺島優・李志清 『三国志12 関羽の死』(MFコミックス ・メディアファクトリー)
22日 寺島優・李志清 『三国志13 出師の表』(MFコミックス ・メディアファクトリー)
UP 2006-06-07
■冰児用メモ■
10日 石毛直道 『麺の文化史』(講談社学術文庫・講談社)
28日 山本瑤 『桃源の薬 金雲の彼方 覇王の夢(前)』(コバルト文庫・集英社)
投稿者 冰児 : 11:19 | コメント (0) | トラックバック
2006年07月07日
7月の新刊情報
1日 ジョゼ・フレーシュ/番由美子(訳) 『絹の女帝 第3部 玉座への道』(ランダムハウス講談社文庫・講談社)
3日 北方謙三 『楊家将 上』(PHP文庫・PHP研究所)
3日 北方謙三 『楊家将 下』(PHP文庫・PHP研究所)
3日 大橋武夫 『兵法三国志―これが中国人だ』(PHP文庫・PHP研究所)
5日 池田知久 『老子 馬王堆出土文献訳注叢書』(東方書店)
5日 寺尾善雄 『一冊で読む!三国誌―黄巾の乱から呉の滅亡まで一気読み! 』(ぶんか社文庫・ぶんか社)
7日 ロバート・ファン・ヒューリック/和邇桃子訳 『白夫人の幻』(HPM・早川書店)
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7日 宮城谷昌光 『管仲 上』(文春文庫・文藝春秋)
7日 宮城谷昌光 『管仲 下』(文春文庫・文藝春秋)
7日 金庸・岡崎由美ほか 『神雕剣侠2 モンゴルの野望』(徳間文庫・徳間書店)
7日 羅貫中・立間祥介 『三国志演義2<改訂新版>』(徳間文庫・徳間書店)
10日 駒田信二 『漢詩百選 人生の哀歓』(ちくま文庫・筑摩書房)
14日 白井恵理子 『黒の李氷・夜話1』(ホーム社漫画文庫・集英社)
14日 長池とも子 『三国志烈伝 破龍3』(プリンセス・コミックス・秋田書店)
22日 陳舜臣・手塚治虫 『マンガ中国の歴史4 玄宗皇帝と楊貴妃』(中公コミック文庫・中央公論新社)
22日 寺島優・李志清 『三国志10 対決!張飛対馬超』(MFコミックス ・メディアファクトリー)
22日 寺島優・李志清 『三国志11 三国 成る!』(MFコミックス ・メディアファクトリー)
25日 吉本健二 『天破三国志(仮)』(学習研究社)
下旬 鶴間和之・黄暁芬 『中国古代文明』(山川出版社)
更新 2006-07-07
更新 2006-06-13
UP 2006-06-07
■冰児用メモ■
7日 ボンキム・チョンドロ著/伊藤孝義訳 『喜悦の寺院』(東洋出版)
7日 いがらしみきお 『ぼのぼの28』(バンブーコミックス・竹書房)
7日 楠本まき 『楠本まき選集1(仮)』(フィールコミックス・祥伝社)
投稿者 冰児 : 16:23 | コメント (0) | トラックバック
2006年07月03日
素焼き壺ヨーグルト
近頃、手作りヨーグルトに凝っています。
もともと保存食を手製するのは好きなのですが、家庭用ヨーグルトメーカーが一般に出回りだした時期にはあまり関心がありませんでした。
きっかけは「もやしもん」と内臓に問題がある旦那の体調、そしてタイミングよく貰った粉末状のケフィアヨーグルト菌のせいでしょうか。
最初は、もらった菌(https://www.naturelab.co.jp/)で恐る恐るつくってみました。牛乳に粉末状の菌(フリーズドライらしい?)を混ぜて一晩おくだけで、本当にヨーグルトが出来たのはかなり感動でしたね。出来るだろうとは思いつつも。
しかし、この菌。同梱の説明書きにも「通常の市販のものより柔らかく出来る」とあって、カード状(豆腐状)には出来上がったヨーグルトながら、混ぜるとほぼ飲むヨーグルト状態です。水っぽいんですな。しかも、やや風味と酸味がキツイ。
テレビの健康番組で話題になっているスキムヨーグルトを参考に、水分以外の含有成分(タンパク質?)が濃ければ多少固く仕上がるかと、牛乳+スキムミルクで作ってみたりしました。(←幾分かは固くなります)
でも味がやっぱり強い気がして、市販のヨーグルトを種菌に作ったりと、色々試行錯誤中であります。
で、その最終兵器として導入したのが素焼きのヨーグルトポットです。ベルメゾン(千趣会)の商品で現在は販売終了です。
実は、市販のヨーグルトで一番うまいと思ったのは、明治ブルガリア「ドマッシュノ」なのでした。普通のヨーグルトではすぐ出てくるホエー(乳清)が少なく、クリーミイでしっかりした食べ応えがひと味違います。
これ、ブルガリアの素焼き壺でつくる製法を工場で再現(実際には素焼き容器で発酵ということではなし)したものなんだそうな。素焼き壺による蒸散で余分な水分が抜け、また気化熱により常温より低い温度を保つのがポイントらしいですよ。
実際に作ってみると、ものすごくクリーミイな出来になりました(普通の明治ブルガリアヨーグルトを種に使用)。
「ドマッシュノ」に比べるとやや柔らかく味も弱いですが、似ていました。それまでのプラスチック容器などで作ったものとは全く別の仕上がりです。
また、「もやしもん」の一巻169P辺りからのどぶろく造りを鑑みると、日本酒造りで「打瀬(うたせ)」と呼ばれる作業が紹介されています。一度、原料を低温下に置いて低温でも強い乳酸菌を繁殖させ雑菌や野性酵母を淘汰し、そののち温度を上げることで有用な酵母のみを培養していく方法です(厳密には言い尽くせないので、これぐらいの表現で勘弁)。
これを参考にして、一般的な自家製ヨーグルト製法としては邪道ですが、はじめに半日ほど冷蔵庫に入れてから常温で作ってみるとか、あの手この手でやっております。ケフィアヨーグルトは、酵母も入っている複合発酵が特徴ということなので、日本酒造りと相通じる部分もあるのかも~と面白いです。(だから、ケフィアヨーグルトはアルコール発酵をする性格もあるので、国内の食品衛生法上の理由で店頭販売されないそうな。容器がブシューってなっちゃいますからね)
家庭で作るには雑菌が入る度合いも高いので注意が必要ですけど、夏休みの自由研究的に面白い点も多くて楽しんでいますよ。まさに実学!
旦那もヨーグルトを食べた日は体調が良いらしいので、寒くなるまでは厭きずに続けたいものですね。
以下はヨーグルト関係のお役立ちサイト……かな?
http://www.yogurt-forum.jp/academy/society_report02.html
明治乳業がやってるヨーグルト・フォーラム……の低温発酵ヨーグルトの記事。
これを実際に商品化したのが「ドマッシュノ」。
http://www.kefir-club.jp/index.html
「牛乳に種菌を入れて♪」でお馴染みのケフィア倶楽部の、ケフィアヨーグルト入門。
いろいろわかるケフィアヨーグルト!!
「お店で買えないヨーグルト」のおいしい秘密ムービーは個人的にクリティカルヒットでした。
これ、もやしもんバージョンで見たいことしきり。
投稿者 冰児 : 22:36 | コメント (0) | トラックバック
2006年07月02日
犬さん
ちょっと暗くて見にくいですが、茶色い毛色のチワワです。先月の初め頃に、我が家へやってきました。
犬好きの義母があれよあれよという間にペットショップでお買上げ。
お店の同世代チワワーズの中でも、やたらとこちらを気にする元気な子犬でした。
在宅4日ほどで具合が悪くなり、パルボウイルスと戦う入院生活に入るも3週間ほどでついにお亡くなりになりました。
正直なところ、ほとんど家に居なかったので愛着がわくとかいう具合でもないのですが、やっぱり小さな命が失われるというのは可哀想なものですね。
我が家って今年はほんと、踏んだり蹴ったりだなあ。
次は自分自身に何かが起こりそうで、ドッキドキです。
