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2006年04月29日

「もやしもん1」 石川雅之

石川 雅之
発売日:2005/05/23
価格
あまなつShopあまなつで見る同じレイアウトで作成
風の噂に加えて「宣和堂絶賛印」で背中を押されて購入してみました。
結論としては、大当たり。

キリンビールとか作治先生が関わる古代エジプトビールのことを考えていた際に噂をきいたもんで、なんとなく麦芽(大麦の芽→もやしだなや)の話とかメインなのかと思ってました。
もやしは広義の意味で種麹のことを指す場合もあるんですね、こいつぁ知らなかったよ。
んなわけで「もやしもん」が言うところのもやしは、ブラックマッペや大豆や緑豆やましてや蕎麦や空心菜のもやし乃ちスプラウトに非ず、蒸したお米に振りまいて培養して米麹として味噌造りや甘酒造りに活用される種麹のことなんですね。さらに言うなれば、豆や他の種子を萌やすのと同様に、麹菌のような菌を萌やすこと全てももやしなわけであるのことよ。

農大に入ることになった主人公の沢木・忽右衛門・直保は、種麹屋こともやし屋の跡取りなのです。

もやし屋と言われてはピンと来なかったもんですが、種麹屋なら小泉武夫さんの本にも度々登場するので分かります。1986年に行われた第四回日本海文化を考える富山シンポジウム「食文化──創造と伝統」の講演が纏められた『味噌・醤油・酒の来た道』では、小泉先生は「私たちの調査では全国に種麹屋さんが現在一三社存続」していると仰っています。種麹屋さんのルーツは味噌屋や醤油屋が出来る頃かそれ以前に遡れると考えられますが、そんな昔から菌を培養している商売があったなんてすごいものです。
今でもちゃんと営業してきっちりサイトまで公開している種麹屋さんもあるですよ!


しかし、「もやしもん」ストーリーには、沢木の実家たる種麹屋はだたの背景だす。あくまで物語は、ある秘密をもつ沢木が奇矯な先生やセンパイたちと織りなす大学生活ロマン(ぷぷ)
沢木は部活に入る訳でもないですが、妖しい発酵学の教授に見込まれて(ツバ付けられて?)、一年のうちからプレゼミ気分ですね。そんな農大ライフと発酵に関する小ネタが綴られていくであります。

そういえば、私は18~20歳まで明大生田キャンパスの周辺に住んでおりました。そこまで近いって訳でもないし立ち入ったことも無いのですが、バイト先にそこへ通う人がいたりしました。で、生田キャンパスって農学部があるのですよ。登戸研究所跡もあったりする。
そこはかとなく学内の話を聞くことがありまして、よく農学部のちょっと変わった感じとか面白く思いましたね。「農学部のほうで牛の解剖があった後に、学食の日替わりがビーフカレーで微妙な気分」とか。
農学部に直には全く関係ないのですけど、そんな話をきいていた、やっぱり学生ではあった当時の自分の気分もひょいと引っ張り出されて、なんだか楽しい漫画なのです。

こちらは作者の石川雅之さんのサイトです。
「もやしもん」沢木の学校のページなんかも作られてあって、なかなか遊び心があるのです。

ところで、わたくし最初は、「もやしもん」も青年マンガにはありがちな情報詰め込み系の漫画だと思っていたわけです。発酵とか酒造りをテーマとするのであれば、それこそ小泉武夫先生の著書丸引きのような蘊蓄を予想していたのですね。
でも、そうではないです。
小泉さんのご本は何冊か読んでいます。キビヤックや火落ち菌、そして実家が酒造な人とか小泉武夫先生を連想せずにはいられない要素は多く、参考にしているんじゃないかとは思われます。でも、それらを語る温度や質感がかなり石川雅之モードな感じで、ひと味二味ちがいます。そこがいいですね。
でもま、『発酵食品礼讃』なんかを合わせて読むと、更に面白いと思いますよ。お奨めです。

小泉さんはこんな会で名誉会長もやっちゃったりする、面白い大学の先生です。荒俣さんなんかに声も掛けて、すごく美味しいカキフライを食べたりもするらしいです。
ちなみにこの会の桝塚味噌って、我が家愛用の味噌のひとつでした。今気付きました。

石川雅之モードでいちばんいいところっていうのは、やっぱり菌たちがすこぶる愛嬌あるとこですね。
沢木がなんと肉眼で見える菌のキャラが立ってて、おまけになんだか色々しゃべるのがサイコーーです。
「本当は見えない何かが見えて形になってる」って漫画は、例えばツボが見えるマッサージ好き女子高生・千愛の親指からロマンスなんかもありますけどね。
「もやしもん」はほんと菌達のストラップが欲しくなるくらい、いいデザイン。
みんなカワイイので、ついつい名前もしっかり覚えてしまいます。小泉さんの本を読んでいる時には、ローマ人の名前のように覚えられなかったというのに、あら不思議だす。
最近は家族間でも菌語(?)が飛び交い、「もっと単細胞に話してくれ」とか「お前とは拮抗だ」とかは、かなりツボな上、日常会話への応用が可能です。
蛇足ながら、「拮抗作用」というのは小泉先生いわく、微生物界の鉄の掟である環境に一種類一定数以上の微生物が繁殖していると他の微生物は侵入・繁殖できない状態だそーです。独占しちゃってるんですね。ヨーグルトとか納豆はだから腐敗しにくいのです。

なんか長くなっちゃったけど、冰児がんばったんだよ。

投稿者: 冰児