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2005年06月09日

和邇桃子氏新作訳! 「アゴールニンズ」

ジョー・ウォルトン
発売日:2005/06/09
価格
あまなつ
当サイトでも、ハヤカワ刊行の「ディー判事」シリーズ訳者としてお馴染み和邇桃子さんの新訳作品です。
和邇さんの手がけられる作品というと、すっかり中国物というイメージが個人的にはついてしまっていますが、こちらは2004年の世界幻想文学大賞(World Fantasy Awards) 長編部門受賞作です。この賞の受賞作で私も名前を知る作品と言えば、「アースシーの風」等があります。和邇さんの翻訳かつ代表訳書であるバリー・ヒューガート「鳥姫伝」も1985年に受賞。タニス・リー「闇の公子」やアン・ライス「ヴァンパイア・レスタト」、トマス・ハリス「羊たちの沈黙」等も候補に挙げられ、怪奇幻想、冒険、オカルトなど、あらゆるファンタジー小説が対象となっています。
さすがに、英語で書かれたものに限るのでしょうか。そこはちょっと詳しくないもので分かりません。

翻訳出版元ハヤカワのニュースによると、登場人物は全員がドラゴンとか?! それもドラゴン一人称?
どうもドラゴン貴族なドラゴンたちが主人公の、ユニークなお話のようです。邦題の「アゴールニンズ」というのはもう一歩すすめると「アゴールニン一族」みたいなニュアンスでしょうか。Agorninは、登場するドラゴンたちの姓なんですね。

中国のお話に登場する龍たちも「敖」という姓を持ち、天界の貴族的に四海の王としてあります。彼らの宮殿に人間だか蓮の化身だかが乗り込んできて大騒ぎしたり、反対に仙人の宝物が欲しくなってちょっかいかけたり。そんな賑やかに喜怒哀楽を見せてくれる東洋世界の龍たちなのですが、このアゴールニンズもそんな雰囲気を持っているのかも?

こちら「Tooth and Claw」というのが原著です。
余談ですが、本家アマゾンの amazon.com では装丁の大判画像(拡大機能付き)に加えて本文ページも少し参照できるようになっているのですね。著名な賞の受賞作だけかもしれませんが。
で、この「Tooth and Claw」に関しては冒頭5ページ分ほどがWEB上で読めますので、英文OKな方はお試しにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。


ところで、原作者Jo Waltonの著作はこんな感じ。(http://www.amazon.com/exec/obidos/search-handle-url/index=books&field-author-exact=Jo%20Walton/104-9339772-6335141
この中で個人的に注目したのが、「GURPS Celtic Myth」という著作。
「ガープス(GURPS)」というのは、汎用TRPGルールブックです。日本でもここ十年ほどの間、グループSNE等が中心となって紹介してきました。訳書では抄訳らしい文庫版完訳版とがありましたが、残念ながら現在はどちらも絶版。
汎用TRPGってナニよ、って方もいるかもしれませんが、簡単に言えばTRPGの「RPGツクール」みたいなものです。システムやルールのおおまかな部分が構築済みで、世界観やキャラクターなどを各自のイメージに基づいて作成できるのです。
国内での筆頭紹介者グループSNEでは、ガープスに基づいたオリジナルTRPGとして「ガープス・ルナル」や「ガープス・妖魔夜行」などを制作しています。つまりやる気になったら、「ガープス・ディー判事」とか「ガープス・東周列国」なんてのも作り上げことが可能です。
閑話休題。
「GURPS Celtic Myth」は即ち「ガープス・ケルト神話」。ケルト神話の世界をガープスで遊ぶガイドです。この一冊を書き上げるからには、英米ファンタジーの揺籃ともいえるケルト神話への深い理解とともに、ゲームというやや新しい世界への感性も持った著者かと思われ、興味深いです。

「なぜ日本人が外国である中国の歴史(ファンタジーも含めて)を書くのだろうか」ということをよく考えています。先日「境界がある上での近さ故か」と書きました。中国は海を隔てた大陸の国だし、朝鮮と違って言葉の語順も違う。しかし、遣唐使の時代以前より中国の文化は脈々と流れ込み、様々な形でどの痕跡のこっています。むしろ痕跡どころか、一部の漢籍や楽器は中国本土で失われて日本の地でより深く昇華されていくこともあります。遠い異国とは言えども、その姿は蜃気楼ではないのです。
そうした遠いようで近い感覚が様々な空想幻想を産み出すのではなかろうか。
ファンタジーと言えばイギリスだろうと思うのですが、イギリスの場合の中国はケルトかしらっと思いました。ケルト人たちは文字も帝国も持たずヨーロッパにも拡がり吸いこまれるように消えていったので、幻想は幻想のままにという状態が永かったのでしょう。中国の場合は超が付くほどの記録魔で文字呪術におかされた文明。幻想のままにしておくには実際的なものが残りすぎて、歴史として認識せずにはおれないのではないでしょうか。

……「アゴールニンズ」とは全くカンケイ無い話になってしまいました。
和邇さん、ごめんなさい。

投稿者: 冰児

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